今回は、採用選考に関する指針(以下、就活ルールと言います)について紹介していきます。
経団連の会長が、今の就活ルールを将来的に廃止したい意向を示しました。
具体的には、2021年度春入社学生の就職活動に対して、大企業を中心とした面接の解禁時期等を定めた『就活ルール』をなくしたいとのことです。
現行は、3月に会社説明会を行い、6月に面接をそれぞれ解禁しています。
この就活ルールが廃止になったとき、学生にはどういった影響があるのでしょうか。
就活ルールと今までの経緯
就職活動の開始時期はいつ頃から始まると思いますか?
実は卒業年度によって、会社説明会と面接開始時期が異なっていました。
卒業時期・会社説明会・面接
2014年度(2015年3月)以前・前年12月・4月
2015年度(2016年3月)・前年3月・8月
2016年度(2017年3月)・前年3月・6月
2017年度(2018年3月)・前年3月・6月
2018年度(2019年3月)・前年3月・6月
2019年度(2020年3月)・前年3月・6月
2021年度(2022年3月)未定
このように、2014年度までは、前年度の12月から会社説明会が始まり、早い人は4月にはもう就職活動が終わっている人もいました。
しかし、3年の終わりから就職活動をし、4月には終わってしまうのでは、学業に集中ができなくなるだろうということで、
2015年度からは、前年の3月から会社説明会が解禁となりました。
その後、会社説明会は3月からの解禁ということで落ち着いています。
一方、面接の解禁については、2015年には4月だったものを8月まで後ろ倒しになりました。
ニュースでも大きく報じられましたが、8月のとても暑い時期に、リクルート姿の学生が多く見受けられました。
しかし、8月は流石に遅すぎるということで、面接の解禁については、6月ということで現在落ち着いています。
そして、2021年度(現在の1年生が卒業する年)については、この就活ルールの廃止をしようという検討が行われています。
追記:2018年11月6日
10月29日に政府が、就職活動日程の関係省庁連絡会議を開き、現在の大学2年生にあたる2021年卒業の学生については、現行日程を維持することを正式決定しました。
2022年以降の卒業学生についても、「当面変更する可能性は低い」との方向性を確認しました。
そもそもの就活ルールとは何か?拘束力は?
そもそもこの就活ルールとは、『採用選考に関する指針』という正式名称の名のとおり、
あくまで指針であり、経団連に未加盟の企業には、拘束力がありません。
日本の代表的な企業1,376社、製造業やサービス業等の主要な業種別全国団体109団体、地方別経済団体47団体などから構成されています。
経団連に未加入の企業には、主に外資系・ベンチャー系企業があります。
そして、経団連に未加盟の企業は就活ルールに囚われずに、様々な機会を設けて優秀な学生を探すことができます。
代表的な例でいえば、インターンシップ等を利用し、優秀な学生を見つけ、採用が始まる前から、内定(内々定)を与えることができます。
経団連に加入している企業からすれば、優秀な学生が奪われてしまうということです。
ただし、経団連に加盟している企業でも、「企業セミナー」や「企業研究会」のようなものを企画し、面接が解禁にある6月よりも前に優秀な学生を探すことができます。
あくまで、面接ではなく、『企業と学生の情報共有の場』という位置付けです。
これらの現象により、現状の就活ルールが形骸化しているという発想のもと、今回、経団連会長は、就活ルールの廃止を提案している訳です。
就活ルールは意味がないのか
形骸化しているという事実は見え隠れしていますが、
現状の就活ルールで設けられている日程は、企業・学生の両者によって、『だいたいの目安』として、機能しているという意見も多く見られます。
企業も学生も、このだいたいの目安を基に、就職活動の採用方針や、学生であれば、就活活動を始めることや、留学の帰国日を決めるなどの行動をしてきました。
また、学生の売り手市場と言われている近年、ある程度の日程で就職活動を行えば、内定を得る可能性を持つことができたということも言えます。
廃止により学生のデメリットは?
また、この就活ルールが廃止されると、学生にとって以下のようなことが懸念されます。
①就職活動の早期化・長期化が進む
②就職活動のスケジュールが組みにくくなる
③就職活動に意識が行き過ぎて、学修時間が取れなくなる。
また、中小企業からすると、大企業の就職活動によって、内定辞退が発生し、思うような採用ができないことも挙げられます。
つまり、3年性の後半からは、常に就職活動を行っており、志望する企業によって4月・6月・8月に面接という可能性が発生し、いつから就活を始めるべきか混乱し、勉強も疎かになる。
このようなことが懸念されます。
採用する側からすると、煩わしい縛りであった就活ルールですが、
学生にとって見ると、現行の就活ルールはそれなりの効果があったと言えるのではないでしょうか。
また、就職活動に積極的な学生と消極的な学生で、情報量に大きな差が出てくることも懸念されます。
就職活動はあくまで自己責任ということも言えますが、今まで以上の混乱を招く危険があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は就活ルールの廃止について紹介してきました。
まだまだ検討段階であるため、確定事項ではありませんが、
今後の動向に注意が必要です。